「利用者の気持ちがわからない」「行動の意図が不明」という利用者に対する問題は、介護職の悩みによく挙げられます。
たしかに利用者の意図不明の行動は多く、どんなにプロの介護職とはいえときにイライラしてしまうこともあるでしょう。
しかし、利用者側にも主張があります。
たとえば、認知症の利用者についてどのようなイメージを持ちますか。
「何もわからないかわいそうな人」「子供と同じ」と考えているならば、大きな誤解です。
正しいイメージは「一人では無理だけれど、手助けがあれば日常生活が送れる人」、「記憶障害と理解力の低下はあるけれど、説明を受ければ適切な判断が可能な人」です。
自尊心や羞恥心なども、健常者と同様にあります。
そこで、何をしても抵抗も意思表示もないという反論もあるでしょう。
たしかに、そう見えるかもしれません。
しかし、彼らは意思表示の術を失っただけで、人格は変わりません。
見下しや軽蔑の感情は伝わりますし、反対に愛や寄り添いの気持ちも分かります。
認知症だから特別なのではなく、認知症だけど人格は私たちと同じという意識で利用者を尊重しましょう。
そして、彼らのペースに合わせて声に耳を傾けることが大切です。
利用者の家族に「利用者は昔、どのような人でしたか?」「何が趣味ですか?」と聞き取りを行うのも、接するヒントになります。
利用者の人格は変わらないので、好みや趣味を把握すれば喜ばせることもできます。
介護は、自分目線ではなく利用者目線で行う必要があります。